この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。
コロナの影響でアメリカで開催予定だったチアリーディングの世界大会が中止になってしまいました。2年間このためにわざわざオーストラリアに滞在していたと言っても過言ではないので、非常に残念です。この記事では選手目線での意見を書いています。
さて、2020年3月16日。チアリーディング世界大会の主催協会である国際チアリーディング連合から正式に「予定していたスケジュールでの世界大会実施はなし」という連絡が来ました。
まずはじめに抱いた感情
その知らせを聞いてはじめて抱いた感情といえば、「よかった、やっと決まったか」です。「悲しい、辛い、悔しい」そんな思いは実はありませんでした。
この数週間、感情をコロナに動かされまくり。最初は、国際チアリーディング 連合は「大会は開催の予定で考えている」との一点。そりゃそうだ、大会側にとっても大会中止になったら経済的な打撃が多いし。
次に、「すでに数カ国からの代表団からは、辞退の表明が出ている。しかし世界大会は開催の予定だ。」ほうほう。つまりライバルが減ったということか。フィリピン代表の友人からも直接、今回は世界大会に行かなくなったと連絡が。
その後も次々と各国の代表団が世界大会の辞退宣言をソーシャルメディア上で行っていました。そのたびに、「この世界大会、アメリカ対オーストラリアになるんじゃない?」というジョークまで。
そして、アメリカがEUやイギリスを入国禁止に。つまり、それらの国からの代表団は出たくても出場できない状態に。それでも「世界大会は開催の方向で考えています。」の一点張り。この頃から、自分自身のモチベーションが徐々に下がっていったのを覚えています。
私としては、ライバルたちがここまで辞退してしまったのに、わざわざ世界大会を行う必要があるのか?そして、もしかしたら、アメリカ出発ギリギリの日になってアメリカが国境を封鎖する可能性もある。
そう、全てが不確定。それでも世界大会を開催するという予定で考えるなら、リスクが大きすぎる。あるかもわからない世界大会に向けて、ハードな練習をするなんて、それはまるでゴールのないマラソンをするようなもので。
「いっそのことなくなってほしい。」というのが私の正直な思いでした。
そして、2020年3月15日。ついに「世界大会の予定していた日程での開催は中止」と公式発表が。
「よかった。」これが私の正直な感想でした。
悲しくないわけではない、このために2年間練習してきたから
よかったとはいえ、色々なことを思い出せば無念です。私は2018年にチアリーディングをするためだけにオーストラリアにきました。現在私がいるチームは、2016年、2017年に世界大会で銀メダル、銅メダルに輝いた実績のあるチーム。2年前、このチームは私にとっての夢のようなチーム、憧れのチームでした。
「一緒に練習させてください!お願いします!」とオーストラリアに渡って直談判した2年前が鮮明に蘇ってきます。
そして掴んだ2018年の世界大会メンバー入り。しかし、その世界大会では残念ながら世界6位におわりました。メダル候補とも言われていただけに、「悔しい。もう一回このチームと一緒に世界大会に挑戦したい」とすぐに思ったのです。
それから、本格的にオーストラリアへ移住、ビザも整え、この2020年のために2年間修行を積んできました。
チームもいい状態に
2年間、ほとんど同じメンバーでまるで家族のように、チーム一丸となって練習してきたし、「世界一も夢じゃない」という段階まで持ってきていました。ほんの数日前まで、過去にないくらいいい状態だったのです。
私のチームには、私のように違う国から、チアリーディング のためにきた選手もいます。日本、韓国、イギリス、フィンランド…来年に延期になったらビザなどの関係でチームに残れない人もでてくるでしょう。もう2度と同じメンバーで世界大会に出場することができません。
実はこの世界大会で引退を予定していた
私は今月28歳を迎える。年齢はただの数字とは言われますが、さすがに体が以前と同じように動けないなという感覚を持ち始めていました。特にアクロバティックな動きをするスポーツなので、体型の変化などがすぐに影響します。やるなら今年が最後。それ以降はコーチとしての仕事やその他のビジネスに集中しようと考えていた矢先でした。
体力的にも正直きつい。あと1ヶ月だからと、力を振り絞ってやってきたということもあります。それが、あと3ヶ月延びる、あるいは来年までのびるとなるとまたモチベーションの維持の仕方も変わってきます。
今年の世界大会が中止になっても来年もう一度出る決断は正直今はできないです。
だから悔しいし悲しいけど悲劇のヒロインにはならない
自分自身がこのためだけに2年間オーストラリアに滞在していたこと、チームが世界一を狙えるいい状態にあったこと、引退を決めていた大会だったこと、この3点が悔しさの原因です。
「世界大会は予定していた日程での開催は中止」と連絡が来た時に走馬灯のようにこの2年間自分が努力してきたことや辛かったことが蘇ってきました。人間面白いもので、「私はこんなに頑張ってきたのに」というところにフォーカスしてしまうみたいです。イギリスからきたチームメイトも「私はこの世界大会のために移住してきたのに。それなのに・・・」ともらしていました。
でも、残念ながら、私はこれまでずっと努力したし、あんな苦労もこんあ苦労もあったし、お金もたくさん使ったし……なんて言ってても、誰かが同情してくれるかもしれないけど解決にはならないんですね。
この件を「世界大会なくなってアメリカに行く必要がなくなったのに、飛行機のチケットの返金もなさそうだわ〜」と自身のインスタグラムに投稿したところ、「ドイツで仕事を始めようとして、日本での会社を辞めたところでこの辞退。ニートのまま日本帰国になったよ」とか「ソフトボールのプロトライアウトを受けるためにアメリカに行ったのに1週間足らずで日本帰国になっちゃったよ」とか様々メッセージがきました。
そう、私だけじゃないんです、困っているのは。
だから、悲劇のヒロインのように振る舞うのはやめようと思いました。その代わりに、これをきっかけに前に進み始めようと。
延期ではなく中止を
6月頃に延期の可能性もでている。とのことで、実は私たちのチームでは依然として練習が続いています。ハードな練習です。正直私はこの曖昧な判断には否定的です。
6月に延期の可能性=やる可能性もあるしやらない可能性もある
どうでしょう。この曖昧な状況で100%の力で練習に取り組めるでしょうか。このような状態で練習していては集中力にも欠け、いつ怪我人が出るかわかりません。
やるならやるでいいんです。6月にやるのであれば絶対に決行してください。気持ちを入れ替えます。でも、やるかどうかわからない。この状況が選手にとって1番辛く、モチベーションも保ちにくい。いっそのこと、お願いだから、中止にしてほしいと願っています。
「選手たちがこの日のためにやってきた努力を無駄にしたくない」この気持ちもわかります。世界大会が予定どおり行われるのが1番よかったに越したしたことはありません。
でも、先の見えない不安と闘うのが今は1番辛いのです。
これからのこと
これからのことは正直わかりません。6月に延期になったら、きっとそこまでは頑張ると思います。
もし中止になり来年また再挑戦となったら…正直今は何も考えることができません。選手としてもう一回挑戦したいという思いがある一方で、体的にもう一年ハードな練習をこなすことができるのかには自信がありません。また、コーチ業や他のビジネスにも力を入れて行きたかったので、その思いとの兼ね合いもあります。
でも、一つだけ思うのは、どんな状況であれ、今自分にできることをやった人が勝つんだと思っています。
ついこの前、日本でお世話になっていた方から「ここでくよくよするのではなく、ここからどう這い上がるかをみんなはみたいと思っているよ」と応援メッセージをいただきました。
這い上がってみせます。(というかもはや落ちたとも思っていないですが笑)
ここまでお読みいただきありがとうございます。この気持ちを10年後も忘れないように残しておくことも目的にこの記事を書かせていただきました。